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zoom RSS ミシマダブル Part1

<<   作成日時 : 2011/03/04 23:05   >>

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先月、Bunkamuraシアターコクーンに「ミシマダブル」を観に行った。

ミシマダブルは三島由紀夫の二つの戯曲「サド侯爵夫人」「わが友ヒットラー」を蜷川幸雄が演出、同一キャスト交互上演という意欲作である。

「サド侯爵夫人」(以降「サド」と略)登場人物はオールフィメール、「わが友ヒットラー」(以降「ヒットラー」と略)はオールメールという、それ自体男女一対の像となる実験的戯曲なのだが、
蜷川幸雄演出はそれに輪をかけて、両作品とも同一キャストオールメールである。

もともと演劇というのは映画と違って
虚構と現実の境目があやふやである。
映画であればフィクションの世界がフィルム上に展開し、
観る側も別の場所、時間からフィクションの世界に入り込んで観ることができる。
しかし、演劇だと、
観客は俳優と同じ空間、時間に存在するために、
例えば
設定上の空間はパリであっても実際は舞台(この場合はシアターコクーン)だし、
設定上の時間は1772年であっても実際は2011年だし、
舞台上の俳優は設定上はルネであっても実際は東山紀之だし、
観客は、虚構と現実を行ったり来たりするはめになる。
映画は極論すれば観客がいなくても物語はフィルム上に存在するかもしれないが、
演劇は観客が舞台を観ながら虚構と現実のはざまで自分の中で物語を作っていく、
観客あっての物語なのである。

蜷川はまず、
「サド」も「ヒットラー」も同じ俳優を使うことで観客に設定上より実際の俳優の存在に注目させ、
しかも「サド」においては女性が演じるべきところを男性にすることでさらに観客に実際の俳優を強く意識させる。

そしてオープニングではさらなる仕掛けが用意されている。
最初、舞台の幕は上がっている。
舞台には舞台美術が一切置かれていない。
そして、中央にはなんと外部との通用扉(?)が大きく開かれて、
外が丸見えなのである。
2011年の、渋谷の街が、荷物を搬入するトラックや自動車が丸見えなのである。
そしてそのままスタッフが大きな鏡を何枚も運び込む。
それが空間を万華鏡のように移動しながら映し出し、舞台全体が鏡に囲まれ、調度品がセッティングされ、俳優が登場し劇が始まる。

舞台の中央には大きな窓とバルコニー。
登場人物はしばしばこの窓を開けるが、
はたしてこの窓の外、バルコニーの外に広がっているのは、
1700年代のパリや1934年のベルリンなのか、それとも2011年の渋谷なのか。

しかも舞台の鏡は客席の観客を映しだし、観客そのものが
「サド」においてはフランス革命にわく群衆の役割を、
「ヒットラー」においてはヒットラーの演説を聴く群衆の役割を演じる。

エンディングも、
俳優が最後のセリフを言い、最後のポーズのまま静止し、
スタッフが調度品を運び出し大きな鏡が万華鏡のように空間を移動し取り払われ、
大きく開いた通用扉(?)が現れご丁寧に救急車の音まで流れて、
2011年の渋谷の街というか雑踏に俳優が包まれて
それから幕が閉じる。

これは虚構と現実の境目があやふやというより混在である。

これらの演出はある意味
というか見事に
「第4の壁」を打ち破っている。

さすが蜷川演出。

オープニングとエンディングで鏡が舞台上を右往左往する時、
切り取られた空間が右往左往するみたいだった。
しかも劇の最中は、角度によっては
合わせ鏡で空間が永遠に続いているようになったり
俳優が合わせ鏡にはさまれた形になったり
超シュールな空間が出現し、
まさにコンテンポラリーアートの様。
コンテンポラリーアートを狙ってやった「チェーホフ?!」と違って
さりげにすごいことをやっていて、
やはり蜷川演出はすごすぎる。

合わせ鏡の演出で頭がくらくらしていると、
同じような演出をやっているアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」をふと思い出したりして。

ところで劇の方だけれど、
平幹二郎、すごい。
彼は「サド」でルネの母親モントルイユ夫人、「ヒットラー」で武器商人クルップの役で、
役を演じているというよりその人そのもの。
もう存在感というか彼がその場にいるだけで空間が違ってしまう。
空気がピンと張りつめ濃くなり重量感を増す。
ただただすごくて言葉にならない。
これは劇場に実際にいないと感じられない醍醐味だと思う。

東山紀之は美しかった。
「サド」のルネはほんとうに貴婦人で、
でもイメージしていたよりちょっと凛としすぎて強い印象を受けた。
第二幕の最後は三島の戯曲では微笑になっているけれど、
彼のは微笑というより意志の強いすごみのある表情に見えて私には強すぎた。
「ヒットラー」の党内右派レームはかつての美青年というか今でも十分青年にみえて、
美しいからこれはしかたないか。
レームは根っからの軍人だから竹を割ったみたいな性格なんだろうが、
党内左派シュトラッサーとの会話ではもうちょっと疑念や戸惑いの微妙なところを表現しても良かったんじゃないかな、なんて。

生田斗真にはびっくり。
「サド」でルネの妹アンヌ役なのだが、
もう可愛くて天真爛漫で無節操で本当に女の子に見えてしかたなかった。
「ヒットラー」ではヒットラー役。
気弱で切羽詰まって苦悩に満ちて、でも狂気を秘めて強い意志を隠し持って。
こんなにうまい役者さんだなんて。

実は当日券で立ち見席で長時間立ちっぱなしだったんだけれど、
しかも一日で2作品ぶっ続けで観たんだけれど、
それが苦にならないほど面白かったなあ。




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