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zoom RSS わたしを離さないで 観に行った

<<   作成日時 : 2011/03/30 01:46   >>

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渋谷Bunkamuraル・シネマで「わたしを離さないで」の上映が始まったのですぐに観に行った。

この後「わたしを離さないで」のネタばれを含むので注意してください。

原作カズオ イシグロ「わたしを離さないで」の単行本が2006年に出版された時、文庫まで待てずにすぐに買って読んだ。
で、他の多くの本と同様、うっすらと覚えている程度に記憶が薄れ、題名さえ忘れていたのだけれど、
映画の予告を観た途端、この本が映画化されたものだとすぐに分かった。
予告の、あの片田舎の寄宿学校のおとなしそうな子どもたちが映っただけで、
「題名は忘れたけど、あの本の映画化だ」とすぐに思った。
それくらいカラーなのにモノトーンのようなしっとりした色調と物静かな俳優たちが
原作にドンピシャだった。

内容は救いのない暗い話。
この時期暗い映画はどうかとも思ったけれど、
細部をけっこう忘れているのでそれを思い出したかったのと、
ラストはおぼろげにでも覚えているからそんなに感情をゆさぶられることもないだろうと
観に行った。

今回、映画を観るに先立ち原作本をマジマジと見て、
表紙の写真がカセットテープだったことに初めて気づいた。
それって子どもの時キャシーがトミーからもらった大切なテープで
それがこの本の題名にもなっているんだろうと
激しく突っ込みたくなるくらいのオマヌケ。
私の記憶ってこんなもんだ。

映画は淡々と静かに進んでいく。
いってみればSFなのに派手なアクションシーンも科学的背景説明も何もない。
ただ、少年少女たちの日常、楽しく時に傷つけあう青春の日々が穏やかに流れていく。
彼らの過酷な運命が分かっているだけに、反抗も逃げ出すことも思いつかず運命を受け入れるだけの彼らを観ているのがあまりにつらい。
映画館では映画の途中からすすり泣きの声があちこちから漏れ始めた。
私の両隣の人もハンカチ手放せない状態だった。
私は内容知っているから平気さ。
と思っていたが、ラスト、キャシーがポロポロポロポロ涙をこぼすシーンには
たまらず泣いてしまった。

ふと正義って何だろうって考える。
彼らは臓器提供のために作られたクローンで彼らの寄宿学校はいわば臓器牧場のようなものなのだが、
それに異を唱える団体の人間が新任教師として潜り込み、
まだ子どもである彼らに遂に真実を教えてしまう。
それもとても感情的に、同情的に。
確かにこの教師の感情や立場は正しいだろう、
でも同情で正義をぶつけられて、
彼らにどうしろっていうのだ。
ただ残酷なだけではないのか。
そしてこれに似た行為を、きっと誰もが、勿論私もやっているのかもしれない。
あるいはその逆も。
そう思うとつらい。

デマについても考える。
若者になった彼らは、本当に愛し合うカップルになれば臓器提供するのに猶予期間がもらえるという噂を信じ、その噂に一縷の望みを託し、その噂にすがりつく。
冷静に考えればそれはデマだと理解できるのだが、
時間のない彼らにはそのデマを信じることしかできない。
主人公のキャシーも、デマだろうと分かっていながらトミーを見守ることしかできない。
ひょっとしたら、キャシーももしかしたらと心のどこかで思っていたかもしれない。願っていたのかもしれない。
デマを信じざるをえない状況の彼ら。
デマを生きる支えにするしかない彼ら。
これは彼らにかぎったことではない。
誰だって、勿論私だってデマとは知らず何かにすがって生きているのかもしれないのだから。
うすうすデマと思っていてもそれを支えに生きているのかもしれないのだから。
そしてそれがデマだと分かった時の落胆、失望。
どこまでもつらい映画だ。

牧歌的で静かな演出が残虐な運命をくっきりと強調する。
俳優たちが感情を抑えた淡々とした演技で
それが心に突き刺さる。
Bunkamura magazine NO.73 で、カズオ イシグロがこう述べている。
「今回特に素晴らしかったのは、主人公3人を演じた俳優たちです。彼らは撮影前から、それぞれのキャラクターについて掘り下げていて、私の知らなかったことまで彼らが教えてくれました。作曲家が書いた曲を、色んなミュージシャンが演奏すると違った方向に作品が広がっていくことに似た体験をさせてもらいました」

ものすごくいい映画。
できれば明るい元気な時期に観たい映画。

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